自主的な取り組みの失敗は、金融規制の必要性を示しています

パリ協定が署名されてからの10年の間に、森林破壊を引き起こすセクターに投入される資金は急増しました。気候変動対策が主軸となるべき期間であったにもかかわらず、各国政府は金融セクターを放任し、その結果、破壊的な状況となっています。2024年だけで、世界は670万ヘクタールの熱帯原生林を失い、生物多様性の崩壊と壊滅的な気候変動は加速しています。本分析は、拘束力のある規制が存在しない中で、銀行と投資家が森林破壊へのエクスポージャーを拡大させてきたことを示しています。これを食い止めるためには、各国政府が金融を規制し、生物多様性崩壊の危機を阻止することが急務です。

金融と森林破壊の最前線

銀行や投資機関は、林業・アグリビジネス企業が世界に残る貴重な熱帯林生態系への事業拡大を可能にしています。それによって森林や泥炭地の破壊、先住民族や地域コミュニティの権利侵害が引き起こされています。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の顧客であるロイヤル・ゴールデン・イーグル(RGE)グループは、自社サプライチェーンにおける森林破壊を2016年以降に停止することを誓約しました。しかし10年経った今も、同グループの紙パルプ部門のサプライチェーンは、森林の皆伐を続ける事業管理地からの調達を継続していることが調査で明らかになりました。調査結果を受けて、RGEグループは自社方針の違反があったことを認めました。一方、問題となっている木材チップ工場のPT. バリクパパン・チップ・レスタリは、森林管理協議会(FSC)の新たなガイドラインによれば、RGEグループの財務的支配下にあり、企業グループの一員とみなされます。

MUFGは持続可能なファイナンスを牽引すると表明する一方で、2020年から2025年7月の間、RGEグループ傘下のエイプリル社に2億2,200万米ドルの融資を行っていました。

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大規模な泥炭地の
破壊と火災

インドネシアのアブラヤシ農園企業トゥナス・バル・ランプン(TBLA)は、大規模な泥炭地破壊と度重なる火災の発生に関与し、2023年の火災だけで145平方キロメートル以上の焼失を引き起こしました。政府による複数の調査では、2015年と2016年、2019年に同社の規制違反が確認されているにもかかわらず、MUFG傘下のバンクダナモンは2020年から2022年にTBLA社への資金提供を続け、2億8,100万米ドルのクレジットラインを発行しました。

2024年10月、インドネシア環境林業省はTBLA社の子会社に対して、生態系と経済への損害に対する4,150万米ドルの賠償を求める民事訴訟を起こしました。TBLA社は国際的なベストプラクティスである「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を持たず、2020年には「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」から脱退しています。また、同社の持続可能でない慣行は公的に記録されていて、MUFGおよびバンクダナモンのリスク管理の重大な欠陥を浮き彫りにしています。進行中の訴訟は、日本の金融機関に環境・法的リスクの高い企業へのエクスポージャーを軽減するために、より厳格なデューデリジェンスが早急に必要であることを警告しています。

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森林破壊を加速させる
「シャドーカンパニー」

RGEグループは、MUFGにとって、東南アジアの森林リスク産品セクターにおける2番目に大きな顧客です。同グループは操業において森林破壊を止めると約束したにもかかわらず、オフショア会社を使ったシャドーカンパニー(影の会社)を利用しているとされ、大規模な森林伐採を行いながらその責任から逃れてきました。この違反にも関わらず、同グループはMUFGから5億800万米ドルの信用供与を2020年から2024年の間に受けています。RGEのシャドーカンパニーは、PTマヤワナ社との関係が報じられています。PTマヤワナ社はインドネシアで33,000ヘクタールの熱帯林を破壊し、巨大パルプ工場を建設している会社です。調査によってRGEグループのオフショア株式保有の構造が環境破壊と先住民族との紛争を引き起こし、持続可能性のコミットメントを弱体化させていることが明らかになりました。

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資金の流れはどこから?

世界の熱帯林破壊の大部分を引き起こしている「森林リスク産品」は、世界中の銀行や投資機関から資金提供を受けています。資金提供元には、森林リスク産品の生産国と消費国の金融機関が含まれます。このウェブサイトでは、森林破壊のリスクを伴うセクターに対して、どの国が最も多くの資金を提供しているのかを見ることができます。対象期間は、融資・引受については2016年1月から2025年7月、債権・株式保有は2025年9月時点の金額となります。

どの銀行・投資機関が 最も問題を助長しているか?

この調査は、銀行や投資機関から熱帯林破壊を引き起こしている企業300社への資金の流れをマッピングしています。ドロップダウンメニューで選択すると、銀行の融資・引受額順位(2016年から2025年7月)、投資機関の債券・株主保有額の順位(2025年9月時点)を見ることができます。

銀行と投資機関の方針は?

世界の熱帯林生物群系で事業を展開する森林リスク産品セクター。それを支える大手銀行と投資機関の環境・社会・ガバナンス(ESG)方針を評価しました。主な森林リスク産品セクターに関する各社のESG方針(2023年時点)の評価結果は以下の通りです。評価は、銀行または投資機関ごとに、森林リスク産品セクターへの融資・引受額あるいは投資額の順に表示されています。

金融セクターへの要求

各国政府と金融機関は、気候危機と生物多様性の危機に対応するために、今すぐ行動を起こさなければなりません。そのためには以下の5つの原則を採用し、実施する必要があります。

01
生物多様性の損失を阻止し、回復させること
02
先住民族や女性、地域コミュニティの権利を尊重し、優先すること
03
社会的および生態学的に公正な移行を促進すること
04
生態系の完全性(インテグリティ)を確保すること
05
セクターや課題、金融サービス全般にわたって、気候変動・生物多様性・権利尊重の様々な機関目標と整合させること

金融規制が今、必要です

ブラジルで開催されたCOP30は、世界の指導者が森林と人々を守る行動を起こすための重要な機会でした。森林破壊と絶滅を助長する資金の流れが管理されていない現状に、終止符を打つ必要があります。RANの「生物多様性のための金融規制」報告書は、地球上の生命を守るために政策立案者が取るべき重要な行動を示しています。

報告書を読む(英語)
Banking on Biodiversity Breakdown
「THE ANSWER IS US(答えは私たちです)」キャンペーンは、COP30の開催前に、気候正義と命を守るための世界的な行動を求め、アマゾン流域およびブラジルの先住民族の呼びかけから生まれました。気候危機に対する共通の課題意識を統一し、啓発することを目的として、地球上のあらゆる地域の先住民族、地域コミュニティ、社会運動、活動家、パートナー組織を包括的に巻き込むことを目指し、2024年6月、ブラジル・アマゾン先住民族組織調整(COIAB)によって開始されました。
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本件に関するお問い合わせ先

麻生 里衣
レインフォレスト・アクション・ネットワーク
責任ある金融キャンペーナー(日本担当)
rie.aso@ran.org

参考資料