金融と 森林破壊の最前線

銀行や投資機関は、林業・アグリビジネス企業が世界に残る貴重な熱帯林生態系への事業拡大を可能にしています。それによって森林や泥炭地の破壊、先住民族や地域コミュニティの権利侵害が引き起こされています。

インドネシアのアブラヤシ農園企業Tunas Baru Lalmpung (TBLA)は、大規模な泥炭地破壊と度重なる火災の発生に関与し、2023年の火災だけで145平方キロメートル以上の焼失を引き起こしました。政府による複数の調査では、2015年と2016年、2019年に同社の規制違反が確認されているにもかかわらず、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下のバンクダナモンは2020年から2022年にTBLA社への資金提供を続け、2億8,100万米ドルのクレジットラインを発行しました。

2024年10月、インドネシア環境林業省はTBLAの子会社に対して、生態系と経済への損害に対する4,150万米ドルの賠償を求める民事訴訟を起こしました。TBLA社は国際的なベストプラクティスである「森林破壊禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止(NDPE)」方針を持たず、2020年には「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」から脱退しています。また、同社の持続可能でない慣行は公的に記録されていて、MUFGおよびバンクダナモンのリスク管理の重大な欠陥を浮き彫りにしています。進行中の訴訟は、日本の金融機関に環境・法的リスクの高い企業へのエクスポージャーを軽減するために、より厳格なデューデリジェンスが早急に必要であることを警告しています。

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インドネシア「ルーセル・エコシステム」での違法森林伐採

MUFG、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は、生物多様性のホットスポットである「ラワ・シンキル野生生物保護区」内の違法農園からアブラヤシを調達していることが明らかになっているパーム油企業の1社または複数社と資金面でつながりがあります(ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ傘下のアピカル、シナルマス・グループ傘下のゴールデン・アグリ・リソーシズ、ウィルマー)。同地域は国の保護区にもかかわらず、2021年から2023年の間に森林減少が4倍に増加しました。MUFGだけでも上記パーム油企業に合計7億300万米ドルを提供し、49億米ドルのサステナビリティ・リンク・ローンも提供してESGの信頼性に懸念が高まっています。銀行が顧客にトレーサビリティの確保を強く求めないために高リスクなサプライチェーンの法令違反継続を許し、自身を財務・規制・評判リスクにさらしています。

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森林破壊を加速させる「シャドーカンパニー」

ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループ(RGEグループ)は、MUFGにとって、東南アジアの森林リスク産品セクターにおける2番目に大きな顧客です。同グループは操業において森林破壊を止めると約束したにもかかわらず、オフショア会社を使ったシャドーカンパニー(影の会社)を利用しているとされ、大規模な森林伐採を行いながらその責任から逃れてきました。この違反にも関わらず、同グループはMUFGから5億800万米ドルの信用供与を2020年から2024年の間に受けています。RGEのシャドーカンパニーは、PTマヤワナ社との関係が報じられています。マヤワナはインドネシアで33,000ヘクタールの熱帯林を破壊し、巨大パルプ工場を建設している会社です。調査によってRGEグループのオフショア株式保有の構造が環境破壊と先住民族との紛争を引き起こし、持続可能性のコミットメントを弱体化させていることが明らかになりました。

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資金の流れ はどこから?

世界の熱帯林破壊の大部分を引き起こしている「森林リスク産品」は、世界中の銀行や投資機関から資金提供を受けています。資金提供元には、森林リスク産品の生産国と消費国の金融機関が含まれます。このウェブサイトでは、森林破壊のリスクを伴うセクターに対して、どの国が最も多くの資金を提供しているのかを見ることができます。対象期間は、融資・引受については2016年1月から2024年6月、債権・株式保有は2024年7月時点の金額となります。

どの銀行・投資機関 が最も問題を助長しているか?

この調査は、銀行や投資機関から熱帯林破壊を引き起こしている企業300社への資金の流れをマッピングしています。ドロップダウンメニューで選択すると、銀行の融資・引受額順位(2018年から2024年6月)、投資機関の債券・株主保有額の順位(2024年7月時点)を見ることができます。

銀行と投資機関の方針は?

世界の熱帯林生物群系で事業を展開する森林リスク産品セクター。それを支える大手銀行と投資機関の環境・社会・ガバナンス(ESG)方針を評価しました。主な森林リスク産品セクターに関する各社のESG方針(2023年時点)の評価結果は以下の通りです。評価は、銀行または投資機関ごとに、森林リスク産品セクターへの融資・引受額あるいは投資額の順に表示されています。

金融セクターへの要求

各国政府と金融機関は、気候危機と生物多様性の危機に対応するために、今すぐ行動を起こさなければなりません。そのためには以下の5つの原則を採用し、実施する必要があります。

01
生物多様性の損失を阻止し、回復させること
02
先住民族や女性、地域コミュニティの権利を尊重し、優先すること
03
社会的および生態学的に公正な移行を促進すること
04
生態系の完全性(インテグリティ)を確保すること
05
セクターや課題、金融サービス全般にわたって、気候変動・生物多様性・権利尊重の様々な機関目標と整合させること

金融セクターの規制についての国際協力

国連の「生物多様性枠組」は生物多様性を保全するための多国間協定で、生物多様性損失を助長する金融の役割に各国が取り組む重要な機会を提供しています。この報告書は金融規制に関するもの、地球上の生命を守るために政策立案者が取るべき重要な行動を強調しています。森林破壊と絶滅を助長する資金の流れが管理されていない現状に、今こそ終止符を打つ時です。

金融規制を求める報告書を読む(英語)
Banking on Biodiversity Breakdown

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関本幸

レインフォレスト・アクション・ネットワーク
日本チームマネジャー 
yuki.sekimoto@ran.org