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MUFG、株主総会でパリ協定に整合する投融資を約束せず
〜メガバンクで最も弱いESG方針〜
米環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(本部:米国サンフランシスコ、日本代表部:東京都渋谷区、以下RAN)は、本日29日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)15期定時株主総会に株主として参加しました。
同社はRANの質問に対して、化石燃料および森林破壊への投融資について、パリ協定との整合に必要な段階的廃止を表明せず、国連責任銀行原則(PRB)が求める行動を満たしていない状況が判明しました(注1)
RANら環境NGOは、会場のグランドプリンスホテル新高輪前で化石燃料への投融資に反対するバナーを掲げ、株主にアピールしました。環境NGOはメガバンク全ての株主総会で気候危機を加速させる投融資に反対するアピール行動を行いました。 特に、25日のみずほフィナンシャルグループの株主総会では、環境NGO「気候ネットワーク」が日本初の気候危機に関する議案を提出し、株主の三分の一以上が議案に賛成しました(注2)。
MUFG の株主総会に参加したRAN日本代表の川上豊幸は「三菱UFJフィナンシャル・グループは、石炭だけでなく、石油・ガスなどの化石燃料や熱帯林破壊による気候危機を加速させている企業へ多額の投融資をしています。株主総会では、パリ協定の目標達成に必要なタイムラインに沿って、あらゆる化石燃料と森林破壊への資金提供を段階的に廃止することを約束すべきではないかと質問しましたが、質問に答えることはなく、方針を復唱しただけでした。このような不誠実な姿勢では、今年のみずほと同様に、来年はMUFGが厳しい株主提案を受ける可能性もあります」と批判しました。
MUFGは国連が支援する責任銀行原則(PRB)に昨年9月に署名し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定に沿った資金提供の実施を約束しています(注3)。
RANの「化石燃料ファイナンス成績表2020」によると、2015年12月のパリ協定採択以降のMUFGによる化石燃料部門への融資・引受額は世界6位で、みずほと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)を上回っています (注4)。炭素予算(排出可能と考えられる炭素量)には化石燃料採掘やインフラ拡大の余地がないことを考えると、化石燃料拡大への資金提供は特に問題です。
MUFGはまた、熱帯林の破壊を引き起こしているパーム油産業の日本最大の資金提供者であり、世界中の森林破壊を推進する最も影響力のある銀行の一つであると指摘されています(注5)。今年はオイルサンドと北極圏の石油・ガスについての方針を採用し、ここ数年は石炭とパーム油に関する方針を採用しました (注6)。しかしながら、問題のある企業やプロジェクトへの資金提供を継続し、MUFGの方針や投融資の実施状況は気候危機やその他のESGリスクを適切に対応するには不十分であることを示しています。
川上は「MUFGは、熱帯林や泥炭地を破壊し、人権を侵害している主要なパーム油および紙パルプ企業に融資し続けています。 MUFGはまた、主要な新しい石炭インフラだけでなく、北米のキーストーンXLを含むオイルサンド・パイプラインにも融資等をしています。大統領候補のジョー・バイデン氏は、自身が当選した場合、気候危機への対応のためにこの事業の建設中止を公約しています。 MUFGが持続可能性リーダーシップを示すことができなければ、さらに国内外の投資家から大きな圧力を受けることになるでしょう」と続けました。
注1)RANの質問概要とMUFGの回答は以下の通り。
RANの質問:「今年3月の朝日新聞記事(※)では、MUFGがインドネシアでの違法な熱帯林破壊に加担していることが報道されました。MUFGによるパーム油産業への多額の融資のためです。MUFGはまた、化石燃料に資金提供する日本最大の銀行であり、アメリカで大勢の先住民族による反対運動に直面しているオイルサンドのパイプライン建設にも多額の融資をしています。残念ながら、MUFGのESGに関する与信方針は、他の2メガバンクの方針よりも弱くなっています。 そこで質問ですが、MUFGは持続可能性リーダーシップを取り戻し、パリ協定の目標を達成するために必要なタイムラインに沿って、全ての化石燃料と森林破壊への資金提供を段階的に廃止することを約束すべきではないでしょうか?」
MUFGの回答:「留意する事業として位置付けている森林セクター、パームオイルセクターにおいては、お客様の環境社会の配慮の実施状況を確認する意味で、その認証の取得を目指したり、認証取得の計画の提出への取り組みをしている。オイルサンドについては、今年発表した環境社会ポリシーフレームワークで新たに留意する事業に追加しました。地域の生態系への影響、先住民族の地域社会への影響をお客様の環境社会への配慮の状況をしっかり確認するなど、MUFGとしては、これらの様々なポリシーに基づいて持続可能な環境社会の実現、パリ協定の合意事項の実現に向け貢献していきたい」
※朝日新聞記事「環境 転換点2030:農園開発、地球脅かす パーム油、持続可能な生産模索 奪われた原生林、取り戻せるか」(2020年3月22日朝刊)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14411952.html
注2)気候ネットワーク「プレスリリース:多数の海外投資家がみずほFGに対する気候ネットワーク株主提案を支持」、2020年6月25日
https://www.kikonet.org/info/press-release/2020-06-25/Mizuho_AGM_20200625
注3)NGO共同声明:グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜 (2019/9/23)
※責任銀行原則には、日本では3メガバンクと三井住友信託銀行が署名している。
注4)NGO共同プレスリリース「RAN他『化石燃料ファイナンス成績表2020』発表〜3メガバンク、パリ協定後も化石燃料に約2,814億ドルを資金提供〜みずほ、三菱UFJが世界トップ10入り」2020年3月18日
※2016年から2019年の間に、MUFGは化石燃料の全セクターに119億ドル、みずほは103億ドルを提供した。 セクター別に見ると、MUFGはオイルサンド、北極圏の石油・ガス、フラッキング、石炭採掘、石炭火力それぞれのトップ30〜40企業の中で日本最大の資金提供者です。
注5)RANプレスリリース「2020新キャンペーン開始!『キープ・フォレスト・スタンディング:森林と森の民の人権を守ろう』〜17社の消費財ブランド&銀行を対象〜」2020年4月1日
注6)三菱UFJフィナンシャル・グループ、「『MUFG 環境・社会ポリシーフレームワーク』の改定について」、2020年5月13日
https://www.mufg.jp/dam/pressrelease/2020/pdf/news-20200513-002_ja.pdf
※参考:RAN声明「三菱UFJ、新ESG方針を発表するも「期待外れ」〜気候変動対策・森林保護、3メガで最も進展のない方針改訂〜」2020年5月14日
RANはMUFGの資金提供について以下の点を指摘してきました。
- 環境・人権面で諸問題を抱える「紛争パーム油」への世界最大の資金提供者の一つで、気候危機を加速させた昨年のインドネシア森林火災にも加担した。
- 今年3月にRANらが発表した報告書「化石燃料ファイナンス成績表 2020」では、パリ協定締結以降の化石燃料事業への融資・引受額が世界で6番目に大きく、2016年から2019年に1,188億米ドルの資金提供が行われたことが明らかになった。
- MUFGは北米のオイルサンド・パイプライン企業への主要な資金提供者であり、資金提供先にはエンブリッジ社が建設するライン3石油パイプライン、TCエナジー社が建設するキーストーンXLパイプラインが挙げられる。さらに、気候災害と先住民族の権利侵害と明確なつながりが指摘されているにも関わらず、新型コロナウイルス感染拡大の最中に両社へ新規の資金提供を約束した。
- 北極圏での石油・ガス開発への資金提供額における世界4位の金融機関で、新規の石炭火力発電所へのファイナンスの原則的な停止を約束したにもかかわらず、議論を呼んでいるベトナムのブンアン 2のような新規石炭火力発電事業への資金供給を続けている。