鉱業

「森林と金融」には、ハードコモディティ(鉱業)に特化したデータセットもあります。この調査では、エネルギー移行に必要な鉱物である「移行鉱物(トランジション・ミネラル)」(および金とカリ)事業を展開する100社以上の鉱業企業への資金提供を追跡しています。また、「森林と金融連合」は、30の主要銀行・投資機関の鉱物採掘に関する方針についての評価も実施しています。本調査は2025年に実施され、融資・引受については2016年から2024年の期間を対象とし、投資については2025年6月時点の状況を対象としています。

Data dashboard interface

移行鉱物

化石燃料から、よりクリーンなエネルギーへの移行は不可欠ですが、移行が加速する中、ニッケルやコバルト、リチウム、銅などの「移行鉱物」への需要が急増しています。これらの鉱物は、太陽光パネルや風力発電のタービン、電気自動車、バッテリーといった現在の再生可能エネルギー技術に使用されています。移行鉱物の採掘部門は急速に拡大していて、今後10年で膨大な資金と投資が流入すると予測されています。これらの鉱山は、先住民族の領域や農民の土地、生物多様性豊かな地域と大きく重なるため、深刻かつ不可逆な被害が生じるリスクが非常に高くなっています。2025年に行われた調査には下記が含まれます。

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政策立案者への提言

以下の提言は、公表時点で37の市民社会組織(CSO)によって支持されています。全リストは下記をご覧ください。

これらの提言は全て、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」や「先住民族の権利に関する宣言」(UNDRIP)、パリ協定、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)、国際労働機関(ILO)の中核的労働基準、その他の多国間合意を含む、国際的な人権および環境法と整合するように設計・実施されなければなりません。

A protest by the Movement on popular sovereignty in mining, at the Brazilian congress. Copyright: Jerê Santos/MAM.

政策立案者への提言


鉱業などの有害産業への膨大な融資などの信用業務や投資の流れに対処するため、各国政府は金融規制に公正と環境保護を組み込む必要があります。「Forests & Finance: Regulating Finance for Biodiversity(森林と金融:生物多様性のための金融規制)」報告書(2024年)で提言されている通り、政策立案者は、生物多様性や気候変動および人権のリスクを金融規制に統合し、金融政策と財政政策を持続可能性の目標と整合させ、義務的な人権および環境デューデリジェンスを強化し、企業の透明性と説明責任を確保するべきです。「森林と金融連合」は、「エネルギー移行鉱物が公正、公平、人権を推進することを確保するための原則」を支持します。同原則は各国政府に対し、以下を求めています。

  • 鉱物需要の公平な削減
  • 人々と地球の保護
  • 公平な開発と税の公正性の支援
  • 公平な国際貿易と投資の促進
  • 移行鉱物に関する国連の強力な行動の確保

金融機関への提言


金融機関は、エネルギー移行を形成し、鉱業に対する資金提供が人権を尊重し、生態系を保護し、安定的で公平な事業環境に貢献することを確保する上で、極めて重要な役割を担っています。金融機関は「エネルギー移行鉱物が公正、公平、人権を推進することを確保するための原則」を支持し、以下の基準をセクター別方針、ポートフォリオ、意思決定に組み込むべきです。

1. 人権と国際法を尊重し、遵守すること

金融機関は、資金提供の対象を、以下を含む国際人権法およびベストプラクティス基準を遵守する企業のみに限定しなければなりません。

先住民族の権利と「自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意」(FPIC):国連「先住民族の権利に関する宣言」(UNDRIP)の原則を適用すること。これには、FPICを与える、または与えない(拒否する)権利、FPICプロセスへの参加を断る権利、領域に対する自己決定権と主権を行使する権利(自主的に孤立している先住民族が接触を受けない状態を維持する権利を含む)の確保が含まれます。

包括的な参加:影響を受ける国やコミュニティが、自らの領域内またはその周辺での採掘に関する意思決定に意義ある形で参加する権利を尊重し、擁護すること。これには、包括的でアクセス可能かつ文化的に適切な意思決定プロセスが求められます。また、FPICを継続的なプロセスとして認識することも必要です。さらに、採掘活動が国際人権法に違反する場合、または合意された保護措置を満たさない場合には、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)およびOECD多国籍企業ガイドラインに沿って、影響を受けるコミュニティと政府が鉱物に関する協定や許認可の再交渉、停止、または終了を求める権利を支援することが必要です。

労働権:ILOの中核的労働基準を遵守すること。これには結社の自由、強制労働および児童労働の撤廃、差別禁止、安全かつ公正な労働条件を遵守し、特に契約労働者、非正規労働者、移住労働者に対する保護に留意することが含まれます。

人権擁護者の保護:人権擁護者(HRD)、影響を受けるコミュニティ、労働者に対するあらゆる暴力、威嚇、報復を一切容認しないゼロ・トレランス(不容認)方針を採用すること。救済へのアクセス:国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGP)に沿った、効果的でアクセス可能かつ独立した苦情処理・救済メカニズムを維持し、コミュニティに救済への透明性ある道筋を提供すること。金融機関は、資金提供の対象を、以下を含む国際人権法およびベストプラクティス基準を遵守する企業のみに限定しなければなりません。


2. 自然を保護し、国内外の環境法を遵守すること

金融機関は、資金提供の対象を、以下を含む環境法および国際的なベストプラクティスを遵守する企業のみに限定しなければなりません。

森林破壊と生態系破壊の禁止:事業活動が、森林破壊、森林劣化、自然生態系の転換、重要な生物多様性地域や保護地域、湿地、泥炭地、手付かずの森林の破壊に寄与しないよう確保すること。

強固な廃棄物管理システム:海洋および河川への廃滓投棄を禁止すること。廃滓施設に対して、設計・建設・維持管理において最高水準の国際安全基準を満たすことを義務付け、事故ゼロ目標、独立監視、明確な事故軽減策および緊急対応計画を要求すること。

水源と水生生態系の保護:鉱業排水、酸浸出、その他の採掘プロセスによる汚染を防止すること。汚染が発生した場合には、影響を受けた地域を完全に復元し、影響を受けた全ての人々に対する完全な補償を保証するよう義務付けること。
鉱山閉鎖と生態系再生計画:生態系の再生や事業によって生じた環境被害の修復を含む、包括的な鉱山閉鎖および回復計画を実施すること。


3. デューデリジェンス、透明性、説明責任を強化すること

金融機関は、有害な採掘活動への資金提供を防ぐため、自らの体制を強化すべきです。具体的には以下の措置が含まれます。

企業グループ全体のデューデリジェンス:いかなる金融サービスを提供または更新する前に、アカウンタビリティ・フレームワーク・イニシアチブ(AFI)が定める「企業グループ」の定義に従って、企業グループ全体の包括的なデューデリジェンスを実施すること。

鉱物サプライチェーンのトレーサビリティ:リスクの高いサプライチェーンについて、金融機関は調達データの開示を要求し、汚職防止対策を採用し、独立した第三者による検証を活用すること。

苦情の公表:鉱業セクターの顧客企業に関連する全ての苦情や申し立て、抗議を開示するとともに、調査や是正措置、結果に関する最新情報も公開すること。

独立監視:資金提供を受けた顧客が人権、環境、および汚職防止基準を遵守していることを検証するために独立監視を行うこと。

不遵守時の対応プロトコル:期限付きのエンゲージメント(対話)計画、顧客の対応状況に応じた対応策の計画、およびダイベストメント(資金引き揚げ)または資金提供終了の閾値を定めた、鉱業セクターの顧客企業向けの明確なプロトコルを公開すること。


4.  気候・自然・開発目標と資金提供を整合させること

金融機関は、鉱業に関連する全ての資金提供を、以下を含むグローバル目標と最良の科学的知見に整合させるべきです。

ポートフォリオ排出量の削減:2030年までに投融資先のCO₂排出量を2019年基準値比で48%、全温室効果ガス排出量を43%削減し、2050年までにネットゼロを達成すること。ネガティブエミッションへの依存を限定し、オーバーシュートなしもしくは低オーバーシュートに対応するネットゼロ排出(NZE)シナリオ(例:IEAのNZEシナリオ)の部門別削減経路を適用すること。

顧客要件:信頼性が高く、期限付きの気候移行計画を有する企業のみを資金提供の対象とすること。当該計画は、スコープ1、2、3の温室効果ガス排出量削減を目的とし、地球温暖化を1.5度に抑える経路および最良の科学的知見と整合したものでなければなりません。

化石燃料への依存固定化(ロックイン)の回避:化石燃料に関連する鉱物サプライチェーン(石炭火力自家発電所を含む)への資金提供を除外すること。CO₂回収・利用・貯留(CCUS)能力を持つと主張する施設や、水素対応能力を謳う施設に対しても例外を設けてはなりません。

透明性:採取産業透明性イニシアティブ(EITI)基準、または同等の開示水準に沿って、透明性をもって報告すること。これには、政府への事業単位の支払い(税金、ロイヤルティ、手数料)、契約、産品取引、実質的所有者情報などの開示が含まれます。

公正な課税:顧客企業が事業展開する各国の税法・規制の文言と精神を遵守し、企業グループの構造と国別税務データを公表するとともに、租税回避スキームの利用を控えること。
公的コミットメント:重要なエネルギー移行鉱物の取り扱いにおいて、国連原則に整合する形で、公平性と公正性を推進することを公に誓約すること。


5. 禁止事項と除外方針を確立し、実施を徹底すること

金融機関は、全ての金融サービスにおいて一貫して適用される明確な除外基準を採用しなければなりません。基準には以下が含まれます。

除外事項 : 森林破壊、先住民族の権利侵害、コミュニティへの深刻な被害、汚染、廃滓管理の不備、人権擁護者への暴力、新たな化石燃料インフラ、または繰り返し行われる、もしくは未解決のESG違反に関連する企業を除外すること。

立ち入り禁止区域:「Banks and Biodiversity No-Go Areas(銀行と生物多様性立ち入り禁止区域)」枠組みに整合し、高リスク生態系における事業活動を除外すること。方針の徹底:全てのデューデリジェンスプロセスに、除外方針の定期的な見直し、検証、および実施を組み込むこと。不遵守の顧客を公開された監視リストに掲載し、期限付きのマイルストーンを設定すること。違反が未解決のままの場合には、資金提供の終了またはダイベストメントを実施し、説明責任を確保すること。


AEER (action for ecology and people emancipation)
AKSI!
AMAN
Blue Dalian
Business and Human Rights Resource Centre
Center of Economic and Law Studies (CELIOS)
CERAH
Climate Rights International
Cosmopolíticas
Cultural Survival
Earthworks
Fair Finance International
Forest Watch Indonesia
Forum Ökologie & Papier
Global Witness
Greenpeace International

Indonesian Center For Environmental Law (ICEL)
INKRISPENA
Jaringan Kerja Lembaga Pelayanan Kristen di Indonesia (JKLPK)/Christian NGO’s Network in Indonesia
Kaoem Telapak
Koalisi Perempuan Indonesia
Lembaga Informasi Perburuhan Sedane
London Mining Network
MADANI Berkelanjutan
MAM
Perkumpulan hijau
Perkumpulan HuMa Indonesia
PPMAN
Publish What You Pay (PWYP) Indonesia
PUSPAHAM
Rainforest Foundation Norway
Reclaim Finance

Responsibank
Rights and Accountability in Development (RAID)
Sahita Institute (hints)
Satya Bumi
SIRGE Coalition
The Wilderness Society
Trend Asia
Voices
Walhi Jambi
WALHI Kalimantan Tengah
Walhi Maluku Utara
WALHI Nasional
WALHI Riau
Working Group ICCAs Indonesia
Yayasan Penguatan Lingkar Belajar Komunitas (PIKUL)
Yayasan Pusaka Bentala Rakyat




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